はじめに
世界経済の中心は東へ移動し続けています。
空前のGDP成長率とアジア太平洋地域(APAC)での海外直接投資増加(FDI)がその状況を加速させています。
特に、アセアン諸国は、FDIの拡大が成功への重要な原動力となっています。
東南アジアの5カ国からなる政治ブロックとして設立されたアセアンは、現在では10カ国からなる経済大国へと発展しています。
アセアン経済共同体(AEC)は現在、世界で最も急速に成長している市場に挙げられ、何億人もの人々が「中産階級」の仲間入りを果たしています。
この「中産階級」の急速な増加は、国内消費を促進し、品質や利便性、そして消費者の選択肢を重視した、より自由で魅力的な商品やサービスの需要を促進しています。
今後数十年の間に、アセアンは新たな成長ストーリーを描くことになるでしょう。
AECの経済統合政策や 最近可決された地域包括的経済連携(RCEP)にも後押しされ、アセアンの豊富な資源、確立された製造業基盤、急速な工業化などが、これからも世界中の投資家を魅了し続けることでしょう。
私たちは、特にパンデミック後に、多くの産業において民間企業に大きなビジネスチャンスがあると考えています。
とはいえ、アセアンの複雑な状況を理解し、ビジネスの成長機会をつかむには、革新的な戦略を採用する必要があることも否定できません。
アセアン市場の成熟化
アセアンには非常に多くの市場があります。
あまりに多くの市場があることから、ビジネスを展開・拡大していく上で、いったいどこから手をつければいいのか、答えに窮してしまうグローバル企業も多く見られます。
例えば、アセアンの発足国のひとつであるシンガポールは、その経済的安定性とビジネスしやすい環境が、長年にわたって世界の投資家から高い評価を得ています。
シンガポールは、このような長年の実績と、ますます良好な経済状況によって、アセアンへの進出や市場地位の強化を望むグローバル企業にとっての「アセアンへのゲートウェイ国」として戦略的に位置づけられています。
本シリーズでは、アセアンに進出するグローバル企業のスタート地点としての「シンガポールの役割」について、より深く掘り下げます。
アセアンをよくご存知の方なら、この地域が決して均質でないことはご存知でしょう。アセアンは民族、言語、文化、法規制、金融システム、そして国境などの面でも実に多様性に富んだ地域です。
アセアンでのビジネスを展開する際、あるいは拡大する際に、どの市場が適切かを判断する際には、慎重な検討が必要です。
アセアンで成功するためには、戦略的なB to Bパートナーシップを構築し、現地企業と協力し、現地のエコシステムの中で自らを適切に位置づけることのできる企業が有利になるでしょう。もちろん、すべての製品・サービス・ビジネスモデルを、現地の経済状況や文化に適合させることも求められます。
アセアン進出は、低コストで済むように見えるかもしれませんが、単独で進出した場合、そのリスクに見合うだけの成果を上げられる可能性は、ほとんどありません。
言語や文化の壁はもちろんのこと、現地の法規制や枠組みは頻繁に変更され、多くの場合、事前に国際的な通知もありません。
グローバル展開のリスクを軽減するためには、信頼できるパートナーを通じて、現場の知識・関係・経験を確保しておくことが不可欠です。
本レポートは、アセアン進出に関心のある企業や起業家の皆さまのために、トライコー・グループのアセアン諸国における豊富な経験と知見を活かし、ビジネスにおける重要な情報を皆さまに共有することを目的としています。
今後はこのような流れでアセアンでのビジネス展開・拡大を目指す日本企業の皆さまに本レポートを紹介していきます。
【今後のトピック】
- なぜ、アセアンなのか?
- アセアン市場概況
- 法人設立
- 税制
- 雇用
- アセアン:中国の地域計画へのテコ入れ
- シンガポール:アセアンへのゲートウェイ
- まとめ
皆さまのアセアンビジネス戦略にお役に立ていただけましたら幸いです。