中国の「ビジネスのしやすさ」のランキングが向上したことは、世界銀行が中国の経済見通しに自信を持っていることを裏付けるものといえるでしょう。
中国政府は、海外からの投資やアウトバウンド投資の促進に力を入れており、2020 年 1 月 1 日に は、「中華人⺠共和国外国投資法施行規則」と「ビジネスを行う環境の最適化に関する規則」が施行されました。
中国では COVID-19 による感染拡大が収束しつつあるといわれており、アフターコロナの時代に入りました。
さまざまな経済データによると、中国経済は持ち直し始めており、COVID-19 がもたらした多くの影響から回復しつつあります。
国際経済や貿易政策の再構築、米中貿易摩擦の激化、世界的な COVID-19 感染拡大などにより、世界の産業サプライチェーンの再構築が急速に進んでいますが、ビジネスは、これまでより一層の複 雑性と不確実性をもたらしています。
このたび、トライコー・チャイナと世界3位のグローバルマーケットリサーチ会社である、仏イプソス社の中国拠点であるイプソス・チャイナが共同で、アフターコロナ時代の中国国内の状況と投 資機会を分析し、業界のリーダーやビジネスの思決定者の皆さまに、専門的なガイダンスとサポー トを提供するために、「アフターコロナ時代の中国ビジネスの動向」を編集しました。
そして、日本の皆さまには、日本語訳で当レポートの内容お届けするために、できるだけわかりやすい表現に校正しました。
アフターコロナ時代に、中国でのビジネスをお考えの皆さまの、ご参考になりましたら幸いです。
1.パンデミック後における、「中国でのビジネス環境」に影響を与える外部要因とは?
1.1 国際経済貿易ルールの再構築:
近年、地域的な多国間貿易交渉が活発になってきています。
このうち、米国、ヨーロッパ、日本などの先進国を中心に、包括的かつ進歩的な環太平洋パートナーシップ(CPTPP)、日・EU経済連携協定(EPA)、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)などが相次いで発効されています。(詳細は下の図を参照) 多国間貿易交渉の台頭により、グローバルな貿易政策の新しい仕組みが構築されました。
この仕組みは、高水準かつ包括的な適用範囲と強力な独占権を実現するものです。

これらの国際貿易の新しいルールには、新しい機能が含まれています。

中国は複数の地域貿易協定を積極的に交渉しており、最も影響力のあるのは東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といえるでしょう。2020 年、中国の東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易投資協力は 着実に成⻑しました。
2020 年 1 月から 8 月までの貿易総額は 2 兆 9300 億元で、前年比 7%増となりました。上半期の中国 の ASEAN への非金融直接投資は 2019 年から 53.1%増加しました。
ASEAN は欧州連合(EU)を抜いて、初めて中国の最大の貿易相手国となりました。中国と ASEAN の 経済貿易協力は COVID-19 の逆風にもかかわらず、東アジアの持続的な経済回復を後押ししています。
すべての関係者は、2020 年中に RCEP の法的文言を見直し、最終決定、署名に向けて取り組んできま した。完成すれば、人口 35 億人、GDP23 兆米ドルの世界最大の自由貿易地域となります。 輸出入に特化した企業の運営コストが削減され、これらの地域は、さらに直接投資を誘致することになるでしょう。

中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドなどが
関税・非関税障壁を軽減した16カ国の統一市場の構築に共同参加しました。
1-2.米中貿易摩擦
米中貿易摩擦は、両国間における貿易の不均衡から生まれました。
「双子の赤字」による巨赤字」による巨額の負債は、米ドルの逆流を妨げてきました。
中国税関総署(General Administration of Customs)が2020年10月13日に発表した最新のデータでは、2020年9月の中国の米国からの物品・サービスの輸入額は、24.7%増の132億ドルで、2018年8月に両国間の貿易摩擦がエスカレートして以来、中国の米国からの月別輸入総額としては最高額となったと発表されています。第1~3四半期の中米貿易総額は2兆8200億元で、前年同期比2%増となりました。このうち、中国の対米輸出は2兆1800億元に達し、前年同期比1.8%増です。
また、米国からの輸入総額は6,408.6億元で、前年同期比2.8%増です。
中国と米国の貿易量は減少していますが、両国の経済貿易協力は今もなお深い基盤を持ち、補完的な関係を保っています。 2008年の経済危機後、中国は輸出中心の経済から国内経済への戦略、つまり需要主導型に調整してきました。米中貿易が中国経済に与える影響は10年前よりも限定的ですが、米中関係は今でも世界で最も重要な二国間関係として存在しています。世界で1番目と2番目に大きな経済国である米中関係は、両国の利益だけでなく、世界の将来にも関係しています。
中国政府は、貿易摩擦から生じた課題に対処するために、改革をさらに深め、長期的な経済発展を加速する方法で開放政策を拡大する計画を立てています。
次回は、アフターコロナの中国経済の復活について、産業分野ごとのデータとともにお届けします。